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洋書を読みたい方に海外児童文学をオススメする理由


児童文学。
あまり読んだことがないな、興味もそんなにないです、という方。
「あなたが普段日本語で読んでいる本は、海外では児童文学なんですよ」と言ったらどう思われるでしょうか。

日本で児童書は「売れている」ジャンルとされています。
KDDI総合研究所が2020年に行った調査では、児童書が圧倒的な強さを見せています。



出版の構成は、絵本が4割になるそうで、読み物が2割強。現在だとコロナでおそらく辞典などがもっと増えているのではないかと思います。



(引用元:同上)

都内の本屋さんに行くと、絵本や図鑑コーナーに、親御さんや子どもたちの姿をよく見かけます。あと、児童文庫コーナー。よみものなら『銭天堂シリーズ』『おしりたんていシリーズ』なんかが人気ですよね。日本の一般読者の方が想像される児童文学(児童書)ってこんな感じではないですか?

一方で、アメリカはどうかというと、こちらのデータが衝撃的でした。



なんと、大人の文芸作品より、子ども向けの文芸作品の方が売れている!

それで、普段から感じている自分の感覚が少し裏付けられた気がしました。

日本の文芸作品って、海外でいうところの児童文学にあたるものが実は多いのではないかということに。


たとえば、大ヒット小説の瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)は、すごく児童文学なんじゃないかと思うんです。まず、主人公が17歳。ちょっと複雑な家庭環境。周囲とのあたたかな交流。もし英語圏で書かれた作品なら間違いなく児童文学として世に出ていたのではないでしょうか。(くわしいあらすじや感想→出版社公式ページ


あと、三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮社)などに代表される青春小説。仲間との熱い友情、あつれき、達成する喜び。もう、児童文学のテーマですよこれ。

他にも、一般文芸ラノベ作品の振興にもいえると思うのですが、日本って世界から見たら実は【児童文学大国】なんじゃないでしょうか?当の日本では、児童文学というとどうも大人が読むものではないと無意識に思われているかもしれませんが、設定や内容を見るかぎり、世界的な観点からするとかなり児童文学化しているのが日本の一般文芸ではないかと思います。
(一方で、格調高い日本語の文学が少なくなっているのではないか、という気もしますが.....)


逆説的な裏付けもできます。というのも、海外の児童文学が日本で翻訳されると一般文芸化することが多いんですね。


たとえば、日本でもヒットしているミステリー、ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』(創元推理文庫、服部京子訳。原作"A Good Girl's Guide to Murder")
これはUK発のYA小説です。でも、日本でYAだと思って手にしている読者はほとんどいないんじゃないでしょうか。



ちょっとマニアックなところで、エドワード・ケアリー『アイアマンガー三部作』(東京創元社、古屋美登里訳。原作 "Iremonger trilogy")
日本なら少し海外文芸に興味がある人が手にするのではと思いますが、これ、原作は中学生向け。日本で言うところの「高学年向け読み物」、対象年齢12歳くらいです。

どちらも児童文学・小説として紹介している日本の書評は、無いといって良いのではないでしょうか。

つまり、日本の読者が面白いと手にしている作品は、海外では「児童文学」である可能性が結構高いということです。


なので、洋書を読みたいと思っている方には、海外の児童文学を、しかも中学生向けとされる Middle Grade あたりからを強くオススメしたいです!

海外の児童文学は、ジャンルこそ児童というくくりではありますが、大人の読者がたくさんいますし、大人の鑑賞に耐える作品、むしろ大人が読んで考えるべき作品が数多く存在します。それは、New York Times のような高級紙の読書欄に、児童書コーナーベストセラーランキングが存在感をもったスペースを割り振られていることからも明らかだと思います。

日本で児童文学賞はあまり注目されることがありませんが、英語圏では大小様々な児童文学賞が設けられていて、とくにアメリカのニューベリー賞、全米図書賞、イギリスのカーネギー賞などは、日本で言うところの直木賞、芥川賞くらいのインパクトがあるとわたしは思います。

それくらい、英語圏では児童文学が当たり前のように受け入れられていますし、レベルも高いし、現代社会のもつ問題にも踏み込んでますし、何より日本という画一的均一的な社会、井戸の中で育ってきた人間にとって、大きな外海を見せてくれる案内役として、海外児童文学ほど適しているものはないのではないでしょうか。

この豊かで楽しく広大な海外児童文学の世界に、洋書を読みたいと思っている方にはぜひ飛び込んでいただきたいです。

このブログでも旬な海外児童文学をどんどん取り上げていく予定ですが、いまのところ Twitter でご紹介することが多いので、ご興味のある方は をフォローしてくださいませ♪(あれ?結局、ただの宣伝??笑)

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